桜こあみ(岩手県)2013.04.05 /food
世界でも有数の漁獲量を誇ることから、北東大西洋海域、北西大西洋海域と並び「世界三大漁場」といわれている北西太平洋海域。寒流の親潮と暖流の黒潮がぶつかり合い潮目を作るためプランクトンが豊富で、さまざまな魚が集まる。日本の三陸沖はこの北西太平洋海域に属しており、岩手県の水産拠点・大船渡の港には、沖合で獲れたサンマやカツオ、サバなどに加えワカメ、カキ、ホタテ、アワビ、ウニといった豊かな海の幸が水揚げされる。三陸の春の風物詩であるイサダもその一つ。
小さい体に栄養たっぷり
イサダの正式名称はツノナシオキアミ(角無沖醤蝦)。体長2~3センチのエビに似た甲殻類で、普段は水深の深い場所に生息しているが、水温が8度前後になると海面近くに群れを成して上がってくるので、船曳網漁業で漁獲する。かごいっぱいに詰められ桜色の輝きを放ちながらぴちぴちと跳ねるイサダは、まさに春の訪れを告げる使者。岩手県では年間2万トン前後が漁獲され、ほぼ同量の宮城県と合わせると国内水揚げ量の8割以上を占めている。
もともとはは主に養殖魚の餌として使われていたが、その味の良さや栄養価から、近年食用としての価値が見直されている。ビタミンAや牛レバーに匹敵する鉄分、牛乳の約10倍ものカルシウムを含み、また甲殻類らしくエビやカニ同様、抗酸化作用のあるアスタキサンチン(あの赤い色の正体)も豊富。さらに中性脂肪の蓄積を抑える働きがあることもわかり、今注目の食材なのだ。
春の三陸浜に“桜”咲く
岩手県のアンテナショップ「いわて銀河プラザ」で購入したこのイサダ、パッケージには「桜こあみ」という、日本人の琴線に触れるなんともかわいらしいネーミングが。茹で干しした状態でパック詰めされているので、特に手を加えなくてもそのままふりかけなどにして食べられるのは便利だ。口に入れるとエビのような香味が広がる。桜えびの代わりにお好み焼きやかき揚げにしたり、クリームコロッケやチャウダー、おこわや中華粥に入れたりと、和洋中いろいろな料理に使えそう。
まずはパスタでいただいてみる。「桜こあみとキャベツのフェットチーネ」は、シンプルな中にもイサダの香りとうまみが利いた春らしい一品に。ほかにもトマトと卵の中華風炒めに入れたり、干し椎茸やニンニク、ネギ、ショウガなどと一緒に刻んで炒め醤油やオイスターソースを加えた「なんちゃってXO醤」も作ってみたが、どれも香ばしい風味がプラスされた本格的な味わいになり、「エビのような」「桜えびの代わりに」という表現がなんだかとても失礼に思えてきた。
2011年の漁解禁前に東日本大震災が発生し、「奇跡の海」「太平洋銀行」と呼ばれた三陸も大打撃を受けた。2年ぶりのイサダ漁再開となった昨年と比べ、今年はまずまずの水揚げだとか。海とともに生きる三陸の人々は、イサダの豊漁に復興への願いを込めているのかもしれない。
※今回使用した生パスタは、北海道・留萌の小麦「ルルロッソ」のフェットチーネです。「ルルロッソ」に関する記事はこちら。
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